取り崩し成功率の研究——
「4%ルール」を日本の前提で計算し直す。
米国の経験則「4%ルール」は、日本の投資家の保守的な前提でも成り立つのか。当サイトのモンテカルロエンジンで60万本のシナリオ(60条件×10,000試行)を生成し、取り崩し率×期間×資産配分の成功率マトリクスを作成しました。前提・手法・乱数シードまで公開した、再現可能な独自試算です。
成功率マトリクス(定額取り崩し・名目)
| 取り崩し率\期間 | 20年 | 25年 | 30年 | 35年 |
|---|---|---|---|---|
| 3.0% | 95.2% | 90.1% | 82.8% | 78.5% |
| 3.5% | 91.7% | 83.7% | 76.0% | 69.3% |
| 4.0% | 87.4% | 76.6% | 67.7% | 60.4% |
| 4.5% | 80.9% | 68.5% | 59.0% | 51.5% |
| 5.0% | 74.9% | 60.3% | 50.4% | 42.3% |
A. 株式100%(期待リターン5%・リスク18%)。金色=成功率90%以上、赤茶=70%未満。成功率=期間終了時に資産が残っていたシナリオの割合(各セル10,000試行)。
| 取り崩し率\期間 | 20年 | 25年 | 30年 | 35年 |
|---|---|---|---|---|
| 3.0% | 99.7% | 97.5% | 93.1% | 87.2% |
| 3.5% | 98.7% | 93.2% | 84.8% | 74.7% |
| 4.0% | 96.0% | 85.6% | 72.1% | 60.1% |
| 4.5% | 91.1% | 75.4% | 58.3% | 44.8% |
| 5.0% | 83.5% | 61.4% | 45.0% | 31.8% |
B. 株式60%+安全資産40%(期待リターン3.4%・リスク10.8%)。金色=成功率90%以上、赤茶=70%未満。成功率=期間終了時に資産が残っていたシナリオの割合(各セル10,000試行)。
| 取り崩し率\期間 | 20年 | 25年 | 30年 | 35年 |
|---|---|---|---|---|
| 3.0% | 100.0% | 99.7% | 97.7% | 91.5% |
| 3.5% | 99.9% | 97.5% | 89.1% | 76.7% |
| 4.0% | 99.1% | 91.5% | 74.0% | 53.6% |
| 4.5% | 96.5% | 77.2% | 52.1% | 33.0% |
| 5.0% | 88.6% | 58.6% | 31.3% | 16.8% |
C. 株式40%+安全資産60%(期待リターン2.6%・リスク7.2%)。金色=成功率90%以上、赤茶=70%未満。成功率=期間終了時に資産が残っていたシナリオの割合(各セル10,000試行)。
平均の計算は嘘をつかないが、答えも言わない。「年5%平均なら4%取り崩しは減らない」という算数に反し、確率で見ると30年成功率は67.7%(株式100%)。平均リターンの一本道計算と確率評価の差そのものが、収益率配列リスクの大きさです。
0.5%の減額は、どんな商品選びより効く。4.0%→3.5%への変更だけで、株式60%・30年の成功率は72.1%→84.8%へ12.7ポイント改善。月換算では3,000万円につき約1.3万円の我慢です。
「安全資産を増やせば安心」は、条件付きでしか正しくない。取り崩し率3%なら株式40%が最も安全(30年97.7%)。しかし5%では逆転し、株式40%は31.3%まで崩壊します(株式100%は50.4%)。低い取り崩し率では低リスクが勝ち、高い取り崩し率ではリターン不足が先に致命傷になる——配分の正解は取り崩し率が決めます。
実務への翻訳:30年計画なら「3.5%+株式50〜60%」が成功率85%前後の現実的な均衡点。90%超を求めるなら3%へ。ご自身の金額・年齢ではモンテカルロ・シミュレーターで同じエンジンをそのまま使えます。
手法と前提(Methodology)
- 各年のリターンは正規分布から独立に生成(年次)。株式:期待リターン5%・標準偏差18%(全世界株式の保守的な想定)。安全資産:リターン1%・リスク0%。毎年リバランス。
- 取り崩しは「初期資産×率」の定額(名目・インフレ調整なし)を年初に控除。税・売買コストは考慮しない。
- 各条件10,000試行、乱数シード20260712で固定(再現可能)。成功=期間終了時に資産残高が正。
限界(Limitations)
正規分布は暴落の頻度(ファットテール)を過小評価し得ます。インフレ調整をしない定額のため、実質的な生活水準は期間中に低下します。為替・税を含めれば成功率はさらに下がる方向です——本試算は楽観側ではなく、それでも原典より厳しい結果が出ている点が要点です。
Veliq Finance「取り崩し成功率の研究——『4%ルール』を日本の前提で計算し直す」(2026年7月)https://veliq-finance.com/research-torikuzushi.html
表・数値は出典明記のうえ、提案資料・記事・社内資料に自由にお使いください。前提を変えた再計算のご要望はinfo@variorchestra.comへ。