CHAPTER 08 / 10 — マネーの教科書
住宅とローン——人生最大の借金と付き合う
住宅ローンは多くの人にとって人生最大の負債であると同時に、史上最低水準の金利で長期資金を調達できる特殊な道具でもあります。繰上げ返済すべきか、投資に回すべきか——感情ではなく構造で判断する章です。
繰上げ返済は「確実なリターン」である
100万円を繰上げ返済すると、その分の将来利息が消えます。金利1.5%のローンなら、年1.5%の確実なリターンを得たのと同じ。一方で同じ100万円を年5%期待で運用すれば期待値は上ですが、こちらは不確実。つまりこの選択は「確実な1.5% vs 不確実な5%」の比較であり、正解は金利・リスク許容度・残期間で変わります。
判断を変える2つの制度——控除と団信
住宅ローン控除の期間中は、残高の0.7%程度が税額控除されるため、実効金利がほぼゼロ〜マイナスのことも。この期間の繰上げ返済は原則不利です。もう一つが団体信用生命保険(団信)——契約者に万一があれば残債はゼロになる、実質的な生命保険。繰上げ返済はこの保険を自分で縮小する行為でもある、という視点は見落とされがちです。
実務の型:金利で三分する
目安として金利1%未満:控除・団信も踏まえ繰上げ返済は急がず、余力は新NISAでの運用へ。1〜2%:好みの領域。半分繰上げ・半分運用の折衷が心理的にも続けやすい。2%超(またはリボ・カードローン等):確実な高リターンとして返済優先。とくに金利15%前後のリボ払いは、返済こそが世界最高の投資です。
CASE — 数字で見る
残債2,000万円・金利1.2%・残り25年。手元の300万円を繰上げ返済すると節約利息は約100万円。同じ300万円を年5%で25年運用した期待値は約+715万円の増加。ただし運用は保証されず、途中で半分になる年もあり得ます——この「確実性の差」に値段をつけるのがあなたの仕事です。
よくある誤解
変動金利が怖い。固定に借り換えるべき?
変動は「金利上昇リスクを自分が持つ代わりに安い」、固定は「銀行に押し付ける代わりに高い」商品です。貯蓄が厚く上昇時に繰上げで対応できる人は変動向き、家計に余白がない人は固定の安心に価値があります。恐怖ではなく対応力で選んでください。
賃貸と持ち家はどちらが得?
損得は立地・期間・相場で決まり、一般解はありません。確かなのは、持ち家は「住居費の前払い+レバレッジ投資」であり、買うなら第1章の家計と本章のローン設計をセットで行うべき、ということだけです。
CHECK — 理解度クイズ(全3問)
ACTION — この章のチェックリスト